2024.10.16 コラム
はちみつが危険な場合がある?安全なはちみつの選び方


美味しくて甘さがあり、栄養もたっぷりのはちみつですが、「食べると危険な場合がある」と聞いたことはありませんか?
はちみつは安全な食品ですが、乳児にとっては重篤なリスクを及ぼす可能性があります。
そこで本記事では、お子さまにはちみつを食べさせるときのポイントや、大人もはちみつを安全に楽しむために知っておきたいことをお伝えします。
ご家庭で、はちみつを安全に味わうためにも、ぜひご一読ください。
乳児にはちみつを与えてはいけない理由

厚生労働省のWebサイトでは、「生後1歳未満の乳児には、はちみつを食べさせてはいけない」という旨が提示されています。
なぜかというと、乳児がはちみつを食べると“乳児ボツリヌス症”という病気を発症し、まれに死に至る危険性もあるためです。 乳児ボツリヌス症は、ボツリヌス菌が乳児の腸内で増殖して毒素を出し、便秘やほ乳力の低下をはじめとする症状を引き起こす病気です。
なお、日本国内での乳児ボツリヌス症は1986年から2020年までの34年間に42例報告されています。
そもそもボツリヌス菌とは、土壌中に存在している細菌で、はちみつにおいては、みつばちが集める花の蜜に土壌中のボツリヌス菌が混じっていることがあります。
そのため、はちみつを食べると腸内にボツリヌス菌が入ってしまうというわけです。
大人の腸では、ほかの腸内細菌によってボツリヌス菌の増殖が抑えられます。
しかし乳児の場合は腸内環境が整っていないため、ボツリヌス菌が増殖し、体に影響を及ぼしてしまうのです。
参照元:厚生労働省『ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから。』
東京都保健医療局『ハチミツによる乳児ボツリヌス症から赤ちゃんを守りましょう!』
乳児がはちみつを食べてしまった場合の対処法
万が一、乳児がはちみつやはちみつの入ったものを食べてしまった場合は、しばらく様子を見て、いつもと様子が違う場合はかかりつけ医を受診させましょう。
なお、乳児ボツリヌス症では、以下の症状がみられます。
▼乳児ボツリヌス症の症状例
- ・首がすわらない
- ・まぶたが垂れ下がる
- ・元気がない・泣き声が小さい
- ・便秘がちになる
- ・母乳やミルクを飲まない
すべてのはちみつにボツリヌス菌が混入しているとは限らないため、はちみつを食べても問題がない場合もあります。 また、ボツリヌス菌の潜伏期間はおよそ3~30日と比較的長いため、はちみつを食べてすぐに上記の症状が現れるわけではありません。
この2つの理由から、はちみつを食べてから30日程度はお子さまの様子を見て、状態を判断する必要があります。
1歳以上のお子さまに初めてはちみつを食べさせるときのポイント

1歳以上であれば、腸内環境が整っており、ボツリヌス菌への抵抗力があるので、はちみつを食べても危険性はないとされています。
とはいえ、「生後11か月まで危険だったものを、食べさせても本当に大丈夫なのだろうか……」と心配な気持ちにもなりますよね。
そこで以下では、お子さまに初めてはちみつを食べさせるときに意識したい、安全にはちみつを楽しむための3つのポイントをお伝えします。
ポイント①少量から始める
まずは少量から、はちみつを食べさせてみてください。 はちみつそのものをひとなめだけ舐めさせたり、はちみつの入ったパンやお菓子を少し与えたり、といった程度から様子を見ていただくことをおすすめします。
そもそもはちみつは、栄養価の高い食品なので、一度にたくさん食べると腹痛や下痢などの不調を引き起こしてしまう可能性もあります。
お子さまにとって、生まれて初めて食べることになるため、少しずつ慣れさせていきましょう。
ポイント②体調が良いときに与える
はちみつを食べさせるのであれば、お子さまの体調が良く、元気なときを選ぶのも大切です。
体調が優れないときは、免疫力も落ちていることが多いので、慣れないはちみつを急に食べると食中毒やアレルギーといった不調を引き起こしてしまう場合があります。
せっかくのはちみつデビューですから、お子さまが元気なときに楽しんでもらいましょう。
ポイント③病院が空いている時間に与える
お子さまが元気であっても、はちみつを与えるのは平日の日中など、小児科があいている時間帯にしておくと安心です。 乳児ボツリヌス症の危険性は低くとも、“体質に合わなかった”などの理由で、アレルギーをはじめとする不調が現れる可能性もゼロではありません。
これは、はちみつに限らず、初めて食べさせるものに共通していえることです。
何かあったときにもすぐに診察を受けられるよう、念には念を入れて、小児科の空いている時間帯を選びたいところです。
外国産はちみつの安全性

大人になってからも、はちみつの安全性が気になるケースがある方もいらっしゃるかもしれません。
日本国内で流通しているはちみつには、日本で採れた国産のものと、ニュージーランドやフランス、ルーマニアをはじめとする海外で産まれた外国産のものがあります。
食品に対する一般的な感覚として「外国産のはちみつって、大丈夫なの?」とご不安に感じられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
その疑問にお答えするなら、「外国産のはちみつでも、品質管理が十分な製品であれば危険性は基本的にない」という回答になります。
確かに過去には、外国産のはちみつに抗生物質などが含まれていたという事例がありました。
しかし、当然ではありますが、すべての外国産のはちみつが危険なわけではありません。
外国産のはちみつを取り扱ううえで、安全性に厳格な基準を設けている業者も多くいます。 品質管理を徹底している業者が取り扱う製品であれば、外国産のはちみつであっても安全に楽しんでいただけるはずです。
なお、杉養蜂園では社長や養蜂部員が現地へ赴き、養蜂場や工場の様子を確認したうえで、一定の品質を確認したものだけを製品化しております。
たとえば、杉養蜂園のモノフローラル・マヌカハニーは、農薬が散布されることのない地域に生息する、マヌカの木を蜜源としています。 2020年に、外国産のマヌカハニーから基準値を超える除草剤成分の“グリホサート”が検出されたという報道がありましたが、弊社の製品においては問題ございません。
参考記事:杉養蜂園のはちみつは、グリホサートの検査で基準値以下のものだけをお届けしています。
グリホサートの検出結果は、ニュージーランド政府や日本で定める基準値以下ですので、安心してお楽しみいただけます。
安全なはちみつの選び方

最後に、外国産のはちみつをより安心して味わっていただくために、はちみつを選ぶうえで押さえておきたい2つのポイントを紹介いたします。
ポイント①原産国で選ぶ
国によっては、はちみつの生産・販売に関して厳格な基準が設けられている場合があります。そのため、原産国を基準に、はちみつの安全性をある程度判断することが可能です。
特にはちみつの品質が高いことで知られているのは、ルーマニアやドイツ、ハンガリーといった一部のEU加盟国およびニュージーランドです。
ルーマニアやドイツでは、“はちみつ純正法”とよばれる基準に則って、はちみつの加熱状況や酵素含有量などの項目が厳しく審査されています。
またハンガリーでは、国内で生産されるアカシアハニーが“国の特産品”として政府に認められており、アカシアの木は政府が保護・管理しています。
このことから、各国のはちみつは品質が高いことがわかるでしょう。
さらに、マヌカハニーの原産国として知られるニュージーランドは、国内の養蜂業を守るため、はちみつに関するさまざまな規制を敷いています。たとえば、他国からのはちみつの持ち込みや輸入は一切認められていません。ニュージーランド産のものであっても、一度国外に持ち出したものをふたたび持ち込むことは禁止されているほどです。
また、2018年には第一次産業省によって、マヌカハニーの品質基準が制定されました。
これにより、マヌカの花の蜜だけを使った“モノフローラル・マヌカハニー”なのか、それともマヌカの花と別の花の蜜をブレンドした“マルチフローラル・マヌカハニー”なのかを区別できるようになったのです。
このように、世界各国で、はちみつの品質維持・管理に関する取り組みがなされています。
規制が厳しい国や、高品質なはちみつの原産国として知られている国のはちみつを選べば、基本的には安全といえるでしょう。
ポイント②取り扱い事業者が認証を取得しているか確認する
日本国内で食品を取り扱うすべての事業者には、HACCP(ハサップ)とよばれる国際的な食品衛生管理の手法に準じることが義務づけられています。
輸入食品を取り扱う場合にも同様の義務が課せられているので、日本で販売されている外国産のはちみつに関しても、一定の安全性が担保されているといえます。
そのうえで、ISO22000やFSSC22000といった規格の認証を取得している事業者の販売するはちみつであれば、さらに安心できるといってよいでしょう。
ISO22000とFSSC22000は、食品安全マネジメントシステムの国際規格です。
いずれもHACCPを基準にしており、HACCPに安全管理の考え方を取り入れたのがISO22000です。そしてISO22000に、さらに厳格な項目を追加したのがFSSC22000なので、HACCPよりもISO22000のほうが、ISO22000よりもFSSC22000のほうがより強固といえます。
いずれの規格も認証取得は義務ではありませんが、認証を取得している事業者のほうが、より安全性が担保されているということです。
そのため、はちみつの安全性にこだわりたいのであれば、ISO22000やFSSC22000の認証取得事業者が販売する製品を選ぶとよいでしょう。
なお、杉養蜂園の工場は2023年6月にFSSC22000を取得しており、はちみつ・漬け蜜(はちみつ漬け)・果汁入りはちみつの製造において安全を徹底しております。
関連記事:はちみつにはどのような種類がある?特徴や選び方を紹介
万が一の危険性を避け、安心・安全なはちみつライフを

今回は、一般的にはちみつが「危険」といわれるケースについて詳しくお伝えしました。 乳児にはちみつを与えるのは、大変危険ですので必ず避けてください。 お子さまが1歳を迎えてから、少しずつはちみつを試して、安心で楽しいはちみつライフを送りましょう。
また、外国産のはちみつに関しては、原産国と取り扱い事業者の安全基準をよく確認すれば危険性はとても低く、安全に味わっていただけます。
安全性が高く、おいしいはちみつをお探しであれば、はちみつ専門店|杉養蜂園の通販サイトをぜひご利用ください。 国産・外国産ともに、品質にこだわったはちみつを取り扱っております。
コラム監修者

平柳 要先生
肩書:医学博士(東京大学)/保健学修士(東京大学)
所属:株式会社 食品医学研究所 代表兼所長
【略歴】
東京大学大学院医学系研究科(生理学)修了後、イタリア・パルマ大学、ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学の客員研究員を経て、日本大学医学部(衛生学)准教授となる。
これまで日本体育大学(公衆衛生学/労働衛生学)、佐野日本大学短期大学(公衆衛生学)などの非常勤講師、日本人間工学会、日本宇宙航空環境医学会、日本臨床高気圧酸素・潜水医学会の理事や日本衛生学会、日本予防医学リスクマネージメント学会の評議員などを務めた。
現在は(株)食品医学研究所の代表兼所長。
【専門分野】
・特殊環境医学(宇宙環境生理学、海洋環境生理学、作業環境衛生学)
・科学的根拠(エビデンス)に基づく食材の健康効果研究
【メディア出演歴】
・NHK「ためしてガッテン」
・TBSテレビ「名医のTHE太鼓判!」
・テレビ朝日「林修の今でしょ!講座」
・CBCテレビ「健康カプセル!ゲンキの時間」
その他、MBS・テレ東・BSフジなど多数出演。
【監修・寄稿実績】
・蜂蜜力(主婦と生活社)
・魔法のハチミツ(マキノ出版)
・体が整う とっておきのしょうがレシピ(ナツメ社)
その他、食品の健康効果に関するムックや新聞・雑誌への
記事の投稿・監修は200冊以上。
【執筆著書】
・がん予防に実は「日光浴」が有効なわけ-ビタミンDの驚きの効力(講談社)
・病気にならない!しょうが緑茶健康法(サンマーク出版、中国語版あり)
・医学博士が考案した長生きふりかけ(サンマーク出版)
その他、専門書『現代生活と保健衛生』(篠原出版新社)・『新編衛生学実習』(南山堂)など、
健康・保健に関する書籍を多数執筆。
【外部リンク】
食品医学研究所ブログ:http://h-and-w.jp/column/
マイベストプロ群馬ブログ:https://mbp-japan.com/gunma/food-medicine/column/